その番組が見えたら終わり!? 「謎のテレビ番組」をめぐる都市伝説ホラードラマ、Huluで配信開始!


 現在、世界の映画界、テレビ界は何度目かのホラー・ブームの最中にある。2010年代のホラー・ブームが興味深いのは、『死霊館』&『アナベル』ユニバースや『インシディアス』といったヒットシリーズが状況を牽引しているだけでなく、海外のメディアで「ポスト・ホラー」とも呼ばれている、これまでとは違う角度からホラー映画的な題材にアプローチした作品が次々に生まれていることだ。例えば、ニコラス・ウィンディング・レフン監督『ネオン・デーモン』はアート映画系ホラー、オリヴィエ・アサイヤス監督『パーソナル・ショッパー』はお洒落フランス映画系ホラー、全米で大ヒットを記録して今月ようやく日本公開されるジョーダン・ピール監督『ゲット・アウト』は社会派ブラック・ムービー系ホラーといったところ。ホラーはもはやジャンルの名前ではなく、不穏な世相を反映した現代的な作品にとって不可欠な要素となりつつある。

 そんな中、ホラー・ブームの決定打となったのが、ホラー映画永遠の金字塔『エクソシスト』の記録を破り、アメリカで歴代ホラー映画ナンバーワン記録を更新中の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』だ。「ホラー小説の王様」スティーヴン・キングの代表作の映画化作品、つまりは王道中の王道のホラー作品が、このポスト・ホラー時代に君臨したことになる。原作では子供時代と大人時代が交互に描かれていたこの大長編だが、実は今回の映画版はかなり大胆な手法で一本の長編にしている。シリーズ化を見据えて企画されたこともあって、今回の作品では主要キャラクターたちの子供時代のみが描かれているのだ(既にパート2の製作も発表)。

 テレビシリーズ『Channel ZERO:キャンドル・コーヴ』を見ながら、頭に去来したのは『IT』のことだった。アメリカの田舎町で起こった、子供が次々と惨殺された事件。その30年後、当時子供だった生存者たちが再会して、その謎を究明していく。そのストーリーの基本構造は、『IT』の原作小説とかなり似ている。もっとも、テレビシリーズとして長すぎず短すぎない、6エピソードでじっくり映像化された『Channel ZERO:キャンドル・コーヴ』では、ちゃんと子供時代と大人時代を交差させて、最後にはその真相へとたどり着く。

 そんな王道のホラー・ストーリーでありながら、『Channel ZERO:キャンドル・コーヴ』はかなり「ポスト・ホラー」的、具体例を挙げるならA24スタジオが製作した『ウィッチ』や『It Comes At Night』といったホラー作品の最先端をいく作品に近い、抑制されたトーンによるリアリズム描写が印象的な仕上がりとなっている。効果音で驚かせるような安易な手法には走らず、じわじわと真綿で締め付けていくようなその恐怖描写は、ホラーというよりむしろサイコスリラー。本作の脚本にドラマシリーズ『ハンニバル』のニック・アントスカが参加しているのにも納得だ。とはいえ、一度見たら夢に出てきてうなされそうな禍々しいモノもしっかり出てきますが。

 日本のホラー・ファンのあいだではまだその認識が浸透しているとは言い難いが、実は現在のホラー・ブームの両輪のうちのもう一つは、テレビシリーズが担ってきた。中でも、『ジ・アメリカンズ』、『レギオン』、『ファーゴ』といったヒット作で名高いFX(FOXネットワークス・グループ)が2011年から手がけている『アメリカン・ホラー・ストーリー』は、シーズンごとにホラーの古典的なテーマを取り上げ、それをゴージャスな映像と現代的解釈によって見事にモダナイズすることで圧倒的な支持を集めてきた。

 アメリカではNBCグループのSF&ホラー専門局Syfyで放送・配信されているこの『Channel ZERO』も、『アメリカン・ホラー・ストーリー』と同じようにシーズンごとにまったく別のストーリーが展開していく人気のホラー・シリーズ。ホラー・クラシックがテーマの『アメリカン・ホラー・ストーリー』シリーズに対して、『Channel ZERO』シリーズはアメリカの各地で語り継がれている都市伝説を題材としている。そのシーズン1として2016年に放送・配信された本作『Channel ZERO:キャンドル・コーヴ』はホラー・ファンから高い評価と支持を集め、現時点で早くも2019年のシーズン4まで製作が決定している。

 もちろんホラーというジャンルはダメな人はダメなので、これまでならば「ホラー・ファン必見」といって文章を終わらせるところだが、今やホラーがエンターテインメントのメインストリームとして台頭しつつある時代。ホラー・ファン以外の方もこの機会にトライしてみてはいかがだろう。映画館と違って、「ダメ!」となったらテレビ画面をリモコンで消せばいいのだから。ちなみに『Channel ZERO:キャンドル・コーヴ』で被害にあうのは、まさにそのテレビ画面に偶然(?)映ってしまった「謎のテレビ番組」を見た子供たち。つまり、本作はホラー映画の代替品的な作品ではなく、最初からテレビで見られることを前提として趣向が凝らされた作品なのだ。もしかしたら、往年のテレビ版『トワイライト・ゾーン』のように、『Channel ZERO』は新時代ホラーのスタンダードとなり得るシリーズへと成長していくかもしれない。(宇野維正)

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提供元:    Real Sound映画部

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