会社を辞めて、こうなった。【第61話】 40歳のバツイチ女と30歳の既婚女、どっちがいい?

会社を辞めて、こうなった。【第61話】 40歳のバツイチ女と30歳の既婚女、どっちがいい?

瞑想合宿で出会った、ひと回り歳下の男子・エム。歩く辞書、オタクエリートとはまさに彼のことで、寝癖がついた頭の中にはありとあらゆる情報が詰まっていて、話もおもしろい! そんな彼に好意を持たれた筆者・土居は、今度こそ年下男子に対してスマートに接することができたのでしょうか?
写真/文・土居彩
【土居彩の会社を辞めて、サンフランシスコに住んだら、こうなった。】vol. 61
【第61話】40歳のバツイチ女と30歳の既婚女、どっちがいい?

ヴィパッサナー瞑想合宿が終わった後、ライドをしてくれたエムから来るメッセージが、週に2日、3日、4日となり……、気づけば毎日チャット状態に。バークレーにヴィパッサナー瞑想を実践する生徒が自由に利用できるメディテーションスペースがあるのですが、自然な流れで毎週末エムが車で家まで迎えに来てくれて、そこで午前中の3時間瞑想をして、一緒に公園にあるカフェでランチをするというのが週末の日課となったのです。
エムは、プログラミングが天職だという自他ともに認める筋金入りのオタクで(夢は90年代のアナログ感があるゲームを作ること)、瞑想、本、音楽など情報の守備範囲も広く(彼の秘密にしておきたいやましい喜び(guilty pleasure)的BGMは、『恋愛サーキュレーション』、笑)、頭のなかで全てのインフォメーションが整理されているので、とにかく何についてたずねても説明がうまくてわかりやすい。服装に関しては全く無頓着で(エムの履いている謎のスニーカーは、どこのメーカーのものなのか全然わからない)周りに全然いなかったタイプの男子なのですが、情報キャッチセンスが良いんです。ずいぶんと歳下なのに私の知らない世界も知っている世界も把握していて、しかもその理解が深く、話していておもしろい!

ひと回りも歳下のお坊ちゃん。手の甲のキスはルール違反だよ!

エムが好意を感じてくれているのはわかるのですが、彼は28歳。ひと回りも歳下です。しかも学費が超高い東部にある名門大学を卒業した後、サンフランシスコに勤めるからといって親が買ってくれたバークレーにあるコンドミニアムに住むって、ちょっとしたお坊っちゃん。そんなちょっと世間知らずなエムは、私が40歳のバツイチであるなんて想像だにしていません。前回の女子(※)は、既婚者だったと知ってショックを受けたと言ってたし、女運が悪いのか、見る目が無いのか……。この人、また引っかかっちゃってるよ、いわくつきの女に。
※気になる前回のお話はコチラ。

http://ananweb.jp/column/sanfrancisco/148719/
ひとりっ子で家族ととても仲が良いエムが実家から連絡してきました。「サンクスギビング(アメリカ人にとってお正月みたいに家族で派手にお祝いする休日)って、どうしているの? スケートとか一緒にどう? 両親がくれたチケットがあるんだ」。ヤバイ。「インターンかなぁ…。あ、そうインターンだった!」「サンクスギビングなのに?」と訝しげに聞かれます。「みんなが休むときにこそ働く、そういう職種なのよ」「……ふぅん。残念だね……」。

ある日車から降りるときに、手を貸してと言われたので「どうもどうも」と握手をしたら、「そうじゃないよ」と言われて、手の甲にキスをされました。グラッ。ど、どこで覚えた? それ。車中で手の甲にキスとは、離婚した後にできたボーイフレンドに生まれて初めてされて、陥落してしまったやつと同じじゃないの!(後日、エムからは丁寧な謝罪を受けました)。
「緊急、緊急です! ねぇ、この事態、どうしたら良いと思う?」と男友だちに相談したら、「次会うときにさり気なく『40歳のバツイチと30歳の既婚者、どっちがいい?』って聞いてみなよ」と言われ、「その二択って28歳の男子にしちゃ、どっちも嫌でしょうよ」と頭を抱えながらも、緊縮財政のために訪問を封印していた素敵なバーへと彼が連れて行ってくれたのですっかりアガって、久しぶりの夜遊び。翌日二日酔いのまま瞑想にいくと、「え! お酒解禁にしたの?! じゃあ、一緒に飲みにいけるね!」とビール好きのエムがすごい笑顔に。「いいえ、お酒はやはりもうやめます。瞑想中ずっと寝てしまったから……(そう、私は尼僧の身)」と言うと、「でもさ、その人とは友だちっていうことでお酒飲みに行ってるのに、なんで僕とは瞑想場所でしか会えないの?」とたずねられました。正論です。私の事情がわからないと、理解できないよね。
チャンス! 今こそ言うのだ、「私は、40歳のバツイチだから。それでも一緒にお出かけしたい?」と。すると「あ、車のキーが無い」とエムが言います。「え? メディテーションホールかな」と一緒に見に行くも、すでにカギがかかっていて中に入れません。「僕のことは気にしないで。キミの家には、僕がUberで送っていくよ。大丈夫」とエムは言いますが、そういうわけには行きませんよね。「でも明日から会社でしょ? 何日もここに停められないと思うよ。一緒に探すよ」。
ひとしきり一緒に探し回ったけれど、鍵は見つかりません。すると、エムが「父さんに電話して、スペアキーを持ってきてもらおう!」と言うのです。えー、そんなことで日曜日にくつろいでいるお父さんを呼び出すの? で、お父さん。1時間もかけて、そんなことのために即来てくれちゃうの?? 「いいんだよ、これって父さんのメンツを立ててるんだよ。『お父さん、ありがとうございます。助かりますー』って女の子の前で息子が頭を下げたら、それって彼の顔がすごく立つことだからね」。私の常識では考えられない、ドラ息子っぷりにあっけに取られて気づきませんでしたが、結果1時間後、お父さんに「はじめまして、アヤです」とご挨拶する流れに。

緊急事態。お父さんにご挨拶。

お父さんはものすごくびっくりした顔をしています。そうだ、きっと。息子がこんな年増の女とハングアウトしていることに驚いているんだ! 起こるべく惨事を察知し、エムに「『彼女は単に一緒の瞑想をプラクティスしている人で、1年半したらアメリカに滞在するためのビザが切れて日本に帰るんだ』って重々説明しておいてね」と伝え、その事態について「再び緊急事態です」と今度は小学生時代の同級生にうろたえながらLINEしたら、「シンプルに重いよ」とアドバイス放棄(という名のもとのアドバイス)の寸殺(ガーン!)。うなだれながら車に乗った後に、「あ、ジャケットのポケットにキーが入ってたよ」と笑うエムからは、「先週父さん東京に行ってたばかりで、僕が今会ってるのが日本の子っていうのでその偶然にびっくりしてただけだよ。父さん、キミのこと気に入ってたよ」と、本当かウソかわからないスマートな返しが。
なんなんだ? なんでこんなに心を振り乱されているのだ? ベジタリアンを貫き、毎朝晩ヴィパッサナー瞑想やって、心の平穏を保とうと努力しているのに。全然実生活に落とし込めていないじゃないか! ただ、良き隣人でいたいだけなのに……。エムを傷つけたくなくて、そして私が傷つきたくないだけなのに……。……私って、単なる偽善者?
どんどん言いづらくなってきます。別に歳のこととか結婚歴とか聞かれていないから、嘘をついているわけではない。聞かれていないことをわざわざ言うのも不自然よね? …というか、ちょっとこれって、自分の全てを知られて嫌われたくないってことは、一周回って実は好きってコトなのかな……? いやー、それはありえないでしょう!! と、ぐるぐるぐる。なんかひと回りも歳下の男子とのやりとりにうろたえたりして、アタシ、カッコ悪。相談相手の男友だちには、「ね、マジに結婚してたんだよね?苦笑。そのヘタレっぷり、中学生、いや小学生に見えてきたわ」とまでに評され、イマイチどころか、イマヨンな女!

イマヨンな女ですみません。

そんななか次第に私が倹約生活をしていることにエムが気づいて「ねぇ、たまに僕が夕食をごちそうするのってどうかな?」と気遣いだし、「奢ってもらったところで、何のお返しもできないからダメだわ」と答えると、「ごちそうするのは僕の利己的な理由で(1.バークレーに友だちがあまりいない。2.行ってみたいレストランがある)、キミには何のお返しの義務が無いとしても?」(*心の声* そんなうまい話、ありえないでしょう。だてに人生経験積んでませんよ)。「ダメだよ。これはあなたには全く関係ない、私個人の心理的な問題で……。自己肯定感の低さといますか(←重ッ!)」「あ、そうそう、100ドル分のフリーチケットがあるんだった。両親が昨年の誕生日にプレゼントしてくれて、そろそろ期限が切れるんだよ……。だから、助けるという意味でさ」(*心の叫び* ご両親からの大事なひとり息子へのプレゼント?! そんなもん、絶対使えないわ!!! 親になったことは無いけど、ご両親がどんな人とキミが親しくなって欲しいかぐらい、想像つくよ!)。「エム……、一緒にお出かけはできないよ……」「That’s too bad……」「……ごめんね」

そんなやり取りをしているうちに、毎日エムからやってきていたメールが週に4日、3日、2日と減っていき……。この状況で、瞑想場所への送り迎えだけをし続けてもらうのはさすがに都合が良すぎると思いだし、「歩いていきたいから」と断るようになると、メディテーション・ホールでエムを見かけることもなくなり。ありのままの自分のことを説明する機会を失くしたまま、結局、友情さえ築くことができずに自然に会わなくなりました。
最後あたりのエムとの会話で、勤めていた会社のM&Aに伴って彼が就職活動を再度することとなり、必要なクオリティは備えていても自分はなかなか面接がうまくいかない。デートしても、女性に慣れていないせいでなんかしくじってしまう。そんなふうにエムがぼやいていたときに、「あなたは今でも十分素敵だけど、そうやっていろいろともがいているうちに、きっと10年後にもっともっと素敵な男性になるよ」と伝えたんです。「そんなもんなのかな……。10年も先のことなんて、今は想像もつかないよ。そうじゃない?」とエムは言っていましたが。ま、そりゃそうだ。

歳を重ねてはじめて、わかることもある。

でも自分の人生を振り返ると、案外、10年ってあっという間だったなと思います。ふとエムに言葉をかけた後に、離婚後にお付き合いしていたボーイフレンド(17歳年上でした)が「アヤはきっと、40歳を過ぎたらもっと素敵になるよ」と言ってくれたことを思い出しました。そのときの私は、彼にふさわしい女性になりたいと背伸びしまくっていたので、“キミは未完成だ” と判断されてしまったのかと少し複雑な気分になって、「今のままでは、まだダメなの? 40歳なんて。なりたくないわ!」と一蹴してしまいましたが、苦笑。今は彼がどんな気持ちでこの言葉を言ってくれたのか、少しわかるような気がします。以前にはわからなかったことが理解できるようになる。歳をとるのも悪いばかりではないですね。そして、なにかにGOサインを出すにはタイミングってあるんですよ、やっぱり。
でもそのタイミングって、絶対なのでしょうか。いつの日か、年齢とか性別とか職業とか収入とか肩書きとか国籍とか。そんなカテゴリーたちにどこかで囚われてしまう自分のものの見方をちょっと緩めることができたら、もっと自由で素敵なひとになれるのかな。
SEE YOU!

©Chiha Hair※カラーバルーンの写真:どうにもモヤモヤしたときは、頭で考えなくてもよいアートを見にいきます。Oakland Museum of Californiaは、第一日曜日・ドネーション制です。
※羊をめぐる冒険の写真:サンクスギビングは結局、ひとり侘びしくコーヒーを飲みながらしっぽりと読書して過ごしました。後日事態を知ったインターン先の社長が『家族パーティに誘ってあげればよかった』というので、『家族にどう私を説明するんです?』と聞いたら、『そこらの道で出会った日本人のホームレスの女性をほっとけなくて、と』。狭いけど雨をしのげるだけの家、あるわよ。失礼ね(笑)!
※ピザの写真:今年のイヴはくだんの男友だちが “歳末たすけあい運動” の一環として、遊んでくれました。二人でガーリックたっぷりのピザをがっつりホールで完食!
※SEE YOU!:髪を切りました! こちらでようやく素敵なヘアスタイリスト Chiha Hairさんに出会えました。

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提供元:    anan web

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